『生き心地の良い町』(4/9)

2019年5月29日

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前に紹介した5つの自殺予防因子の中で、どういうことなのかよく分からないものに「その四 『病』は市に出せ」があります。

一言で言ってしまえば、「たいへんなことを一人で抱え込まない」ということのようです。
病気はもちろんのこと、家庭内のトラブルや事業の不振、あらゆる問題を「公開の場に出せ」ということだそう。

自分だけで抱え込まず「市に出せ」ば、「この薬が効くだの、あの医者が良いだのと、周囲が何かしら対処法を教えてくれる」(73ページ)というのです。

近隣地域との違い

そして著者が海部町と対比させた自殺多発地域であるA町や近隣の地域とのさまざまな違いが述べられています。

たとえばA町の高齢者は「迷惑」という言葉をよく口にしたと言います。

そのことを著者は、隣人が常に支え合わなければ生活が成り立たなかった時代、「ひとたび援助を求めれば、相手はどんな無理をしてでも応えてくれることがわかっていたからこそ、かえって『助けてくれ』と軽々しくは言えなくなってしまったのではないか」(78ページ)と分析しています。

また海部町と近隣地域でうつの受診率を比べた場合、海部町が最も高いということも確認されました。

さらに海部町では「だれかがうつだ」という情報があると、「見にいてやらないかん!」(81ページ)と見舞いに行き、隣人に対して「あんた、うつになっとんと違うん」と面と向かって指摘することもめずらしくないそうで、この話を自殺多発地域のA町の住人人に話したところ、「ほないなこと、言うてもええんじゃねえ」と目を丸くしていたそうです(82ページ)。

済州島でのこと

この話を読んで、私は以前、臨月間近の大きなお腹をした友人と一緒に韓国の済州島へ旅行したときのことを思い出しました。(このシリーズの最初の記事へ“>続く…)

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Posted by 木附千晶