猫ブームとはなんぞや(6/8)
こうした環境の“関わり”の違いが、子どもに影響を与えることは否めないでしょう。
自分のことを肯定的に受け止められるか、そうでないかは、人格も、その後に出会う他者との関係性も、大きく左右するはずです。
環境要因は変えられる
それからもう一つ、私が「遺伝的要因よりも環境要因の方が重要」と考える理由があります。
それは、「遺伝的要因は変えられないけれど、環境要因は変えられる」からです。
科学の進歩によって遺伝子の研究はとても進んできました。倫理的な問題は残りますが、もしかしたら近い将来、遺伝子操作によって困ったパーソナリティになる遺伝子を除去したり変化させることができるようになるかもしれません。
でも、少なくとも現時点で難しいと言わざるを得ません。
たとえばキレやすいとか、共感能力が低いとか、そういった特徴を親から受け継いでいたとしても(どの程度、受け継がれるかも疑問ですが、今の医学技術では遺伝子に直接的にアプローチすることはできません。
でも、環境は違います。だれかが子どもが発する症状というメッセージに注目し、周囲との関わりの問題点に気づいて、その環境を調整することができれば、いくらでも変化を起こすことができます。
そう考えると、環境にアプローチしていくほうがずっと現実的ではないでしょうか。
人間関係(環境)に視線を移せば
くしくも原宿カウンセリングセンター所長で心理学者の信田さよ子氏が、著書『カウンセリングで何ができるか』(大月書店)のなかで「最初に問題とされた症状めいたあるキーワードを手がかりに、背後にある人間関係に問題をシフトしていく」(52ページ)ことの大切さを指摘されていましたが、まさにそういうことだと思います。
人間関係、つまりその人をとりまく環境に視線を移すことができれば、たとえ対象がおとなであっても、心理職ができる仕事は格段に広がります。
逆に、症状を「心の問題」「遺伝子の問題」「発達の問題」にしてしまったらどうでしょうか。クライアントさんの持ってきた症状のほとんどは、投薬治療の対象にするしか無くなってしまいます。(続く…)