地域の再生と地域猫(5/8)
地域総動員でミーちゃんの捜索を開始してから約一月半がたった頃です。あるひとりの女性が美容院を訪れました。
近所の猫好きの方から
「最近、お宅にご飯をもらいに来る猫のポスターを駅前あたりで見た気がする」
と聞き、気にしながら習い事に向かう途中、ポスターが目に留まったとか。
「ここ1〜2ヶ月くらい家にご飯を食べに来ている猫だと思います。人なつっこい猫だし、首輪もしていたので気になっていました」
そう話す女性に
「今度、ご飯を食べに来たら、ミーちゃんを捕まえておいてください」
とお願いし、その夜、数人で引き取りに行きました。
しばらくぶりに会ったミーちゃんは、少し痩せたようでした。一回り小さくなって、体も汚れ、怖い目に遭ったのかちょっとオドオドしていました。連れて帰る途中の車の中で、何度も不安げに「ナ〜」と、かぼそい声で鳴きながら、窓の外を見ていました。
心配していた商店街の人たちのお店にミーちゃんを連れて報告に行くと、みんな商売そっちのけで外に出てきました。涙を浮かべながら、「どこにいたの?」「よく戻って来たね」と、代わる代わる声をかけます。まだよく事情が飲み込めないらしいミーちゃんはキョトンとしたまま、みんなの腕に抱かれていました。
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またまたポスター作成
翌日、さっそく「ミーちゃん、戻って来たよ!」のポスターを作成。商店街のあちこちに貼ってもらいました。
それから数日、ミーちゃんは美容院の指定の場所(電気マットの上)で、暇さあえあればずーっと眠っていました。ご飯はもらえていたかもしれませんが、安心して眠る場所が無く、精神的によほど疲れたのでしょう。
でも、続々と尋ねてくるお客さんで、なかなかぐっすり眠れません。ポスターを見ては、心配していた人が一人、また一人「ミーちゃん見つかったんだって!」と尋ねて来ます。 そのたびにミーちゃんの眠りは妨げられ、しばらくの間、ひとしきり話しかけられたり、抱かれたり、撫でられたり・・・アイドルは休む間もない感じでした。
そんな状態が、それこそ一月以上も続き、またまたミーちゃんの根強い人気を再確認させられました。
「顔見知り」がいっぱいに
それから数ヶ月。商店街周辺では、「名前は知らないけど顔見知り」な人たちがやたらに増えました。「学生さん」「会社員の男性」「OL姉妹」「主婦の人」・・・以前は、商店街を無言で通り抜けていた人たちが、あいさつを交わすようになりました。
中には、ミーちゃんのご飯を美容院に預けて行く人もいます。・・・みんなで話合ってミーちゃんのご飯は美容院の周囲であげることに決めたからです。
ミーちゃんが発見された公園は商店街から4〜5キロ離れたところ。とても猫の足で歩いて行ける距離ではありません。首輪に付けていた名札も取られていました。そうしたことから、「ミーちゃんにご飯をあげることをよく思わない猫嫌いの人が捨てたのではないか」との説が有力になったためです。(続く…)