静かなる反乱(7/8)
かくしてだれもが、ますます自分の思いや願いにはふたをし、意見を飲み込み、多数に黙々と従うサイレント・マジョリティーに仕立て上げられていきます。
その総仕上げを担うのがマスコミです。
日本の大きなメディアは、権力を批判し、監視するジャーナリズムという役割を捨て、政府・財界と一体化し、自らも権力となってしまいました。もちろんフリーランスの人やネット上のメディアなどではジャーナリストたろうする動きは、ずっとあります。でもその影響力は大メディアとは比べものになりません。
今回は大手のメディアでも「福島原発事故発生時に東京電力会長が大手マスコミ幹部を接待旅行に行っていた」とのニュースを流しました、原発震災が起こらなければ、こうした報道は、まずされなかったことでしょう。
マスコミが追求すべき疑問山積
とくに人災と言うべき福島第一原発事故については、素人目に見てもマスコミが突っ込むべきところが山のようにあります。
たとえばなぜ、地点ごとの細かい正確な放射線量のデータを随時公開しないのか。なぜ、魚を調べる前に、最も汚染が心配される海藻を調査し、そのデータを明らかにしないのか。なぜ、じわじわと福島第一原発からの避難距離を伸ばしているのか。なぜ、日本中の電力を相互に使えるよう電力会社間の調整を図らないのか。
そうした努力はしないまま、なぜ政府が、平気で個人の責任と負担を強いる自主避難や野菜の出荷自粛などを呼びかけることができるのか。
そもそも、今まで国が「ちゃんとやっている」と言っていた地震や原発に対するリスク管理がどんなものであったのか、もっともっと鋭く追求すべきです。
原発を持つ、持たないの議論はひとまず横に置いておきましょう。
でも、現にこれだけ危険なものを私たちの国は50基以上も持ち、日々、動かしているのですから、その危険性は周知徹底されるべきです。地域の人たちはもちろん、国民全体が「危険なもの」であるという認識を持って、日頃から準備しておくだけの正確な情報、最悪の事態を「想定した」シナリオは必須のはずです。
驚愕の調査結果
個人レベルでは、こうしたことに疑問を持ったり、憤ってはいても、なかなか社会全体の動きにまではなりません。
前に紹介した高校生の文章を真似るとしたら、「たとえむちゃな計画停電で病院への送電が止まっても、仕事や通勤に支障を来しても忍耐忍耐忍耐! 解釈を加えた報道ばかりが伝えられ、都合の悪いデータが非公開でも忍耐忍耐忍耐! 大勢の人が家族や住み慣れた土地や未来までも奪われても忍耐忍耐忍耐!」という感じでしょうか。
3月にあった原発反対のデモも、ドイツでは参加者が25万人を超えたというのに、日本は1500人ほど。例年に比べればかなりの大人数ではありますが、タイミング的に考えると、もっと大勢が参加してもいいように思えます。
そして、3月19日の『東京新聞』によると、原発に不安を感じつつも「運転しながら安全対策を強化していく」が56.2%と半数を超えた数字になっていました。
今なお福島第一原発の状況が安定していない状況、そして電力会社と政府の右往左往ぶりを考えると、その回答に驚愕せずにはいられません。(続く…)