本音とたてまえ、オモテとウラ(7/7)

2019年5月29日

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進む学力低下、増える子どもの問題行動、ぬぐえない学校(教師)不信のスパイラルの中で、教育基本法はいとも簡単に「改正」されてしまいました。
憲法とも連動した国の基幹法でもあるとても大事な法律なのに、その理念や在り方については、ほとんど議論されないまま・・・。

子どもの成長発達を援助するための国家の責務を定めた国連の条約であり、歴史的、科学的、国際的な英知が詰まった子どもの権利条約も、まったく無視されました。

このときもまた、一人ひとりの子どもが生来持っている能力を最大限に伸ばす人間教育から、国際社会で勝ち残れるような企業(国家)利益をもたらすことができる人材教育へと理念の大転換を果たす法「改正」であることはいくつものオブラートに包まれ、隠さました。

「大競争時代を生き抜く力を持つ子どもを育てる」ーーそんな「改正」に向けたスローガンは、愛するわが子の行く末を案じる親心にかなり強く響いたことでしょう。

「最小不幸社会」への期待と現実

そんなことを書いているうちに、世の中は鳩山政権から菅政権に・・・。
鳩山前首相とは違い、菅首相は市民運動からのたたき上げ。巷でも「とてもクリーンなイメージ」と語る人が多いようです。

そんな菅首相が目指すと言う「最小不幸社会」。その指さす方向を信じて応援すれば、「世の中、きっと良くなるに違いない」という期待もふくらみます。

でも、そう語る一方で、菅首相は「行政に依存しない新しい公共」や「地域主権」「さらなる規制緩和(民間開放)」も声高に叫んでいます

福祉を厚くするのであれば、生存や保育、教育など、生活の根幹に関わる部分の行きすぎた規制緩和をまず是正しなければなりません。あらゆる国民が安心して行政に頼ることができる仕組みも必要です。

国の負担金を減らして福祉や教育の水準を地域にまかせるのではなく、まず国が基準をつくり、その基準に見合った公教育や公的保育、福祉など出来るよう交付金を出さなければなりません。そうしなれば、大阪府のように地方の首長の考えによっては福祉や教育などに回すお金が削られてしまう可能性があり、地域格差がますます開いてしまいます。

本質を見抜く目を持ちたい

すでに民主党が提案した労働者派遣法や障害者自立支援法の改正案を見れば、党としての民主党が「ひとりひとりの生活をいちばんに」考える政党でないことは見えてきます。
野党時代に民主党がつくった教育基本法改正案では、自民党のそれよりも「競争時代を生き抜く道具」として子どもを見ていることが鮮明です。

そうした民主党が壊そうとしているのは本当に官僚政治なのでしょうか? 官僚ではなく、福祉や公教育を支える国(行政)の仕組みのようには思えるのは、私だけでしょうか。

民主党が政権交代を果たした昨年9月の衆議委員議員選挙前は、酒井法子被告の事件でマスコミは大賑わい。今回は相撲賭博問題で、国の命運をかけた参議院議員選挙が吹き飛んでしまう勢いで、立候補者の素顔も、各党の公約もよく見えないまま投票日に突入です。

日々、相撲賭博報道にやっきになるマスコミの様子は
「時の権力にとって不都合なことを国民に知らせずにすむよう、スケープゴートをつくっている」
ーーかつてマスコミの末席にいた私には、そんなふうにも見えてしまいます。

情報があふれかえる現代だからこそ、「ことの本質を見抜く目を持ちたい」。そう強く感じる今日この頃です。

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Posted by 木附千晶