現実から解離した教育再生会議(3/8)

2019年5月29日

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「ゆとり教育」が奪った「ゆとり」

「ゆとり教育」の中身にも、疑問があります。再三やり玉にあがっている「ゆとり教育」とは、本当に「ゆとり」のあるものだったのでしょうか?

私が「ゆとり教育」について取材をしたのは05年のことですが、保護者や教員たちは口をそろえてこう言いました。

「『ゆとり教育』が始まった頃から、子どもも教師もまるでゆとりがなくなった」

取材をしていくうちに、その原因と思われることがいくつか浮かび上がってきました。

まず授業時間全体は減ったのに小学校3年生以上だと週3時間、中学生になると週2〜4時間の総合学習の時間が始まりました。
総合学習の内容も問題です。子どもが自分のペースで何かを調べたり、課題について研究したりできるような「ゆとり」のある総合学習を行っている学校はあまりありませんでした。

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もちろん中には、ものすごいエネルギーを割いて総合学習を組み立てている教員もいました。でも、それはほんの一握りだったように思います。

都内のある学校では、保護者の方々からは「自分の点数稼ぎのため、教育委員会に向けたパフォーマンスとして総合学習を利用している教員もいる」と、こんな話も聞きました。

ある教員が「総合学習で自然を学ぶ」として校庭に本格的なビオトープをつくりました。その過程で、「実生活の体験を積ませる」と生徒に建設業者に電話をかけさせ、工事の相談をさせました。
後日、業者側が工事の日取りや具体的な金額について教員と話し合おうと連絡してきたところ、教員は「あれはただの電話練習。工事の予定は無い」と言ったそうです。

そのやりとりだけでもびっくりする話ですが、話はまだまだ続きます。
業者を断った教員は、ショベルカーを自ら操り、校庭に池を掘りました。その周辺にはとある博物館の学芸員とかけあい、絶滅のおそれもある貴重な水草を植え、トンボの飼育を始めたのです。
ビオトープが完成したときには、大々的な授業参観を実施し、教育委員会からも絶賛を浴びました。

・・・が、ビオトープがきれいだったのは束の間。その後、何の手入れもしないまま放置されたビオトープの水草は枯れ、ボウフラの巣になってしまったそうです。

また、総合学習の時間に地域の著名人を呼んできての講演を行なっていたある学校では、元格闘家が「最近の親子は血を見る機会が足りない」と、殴り合いを勧めたとの話も聞きました。

これらのエピソードは極端な例かもしれませんが、その他の総合学習も「職業体験と称しての市民インタビュー」や地元の有力企業の見学など、「教科学習の時間や学校行事を削ってまでやるほどのことなの?」と思ってしまうものが多かったのを覚えています。

しかも、当時すでに都内の教員たちは教育「改革」の影響を受けていました。管理職への提出書類の増加や学校ごとの数値目標を達成するための努力で手一杯。とても総合学習の内容を考えたりする余裕はありませんでした。

これは余談になりますが、こうした事情を背景に、子どもたちが大好きなファストフード店やお菓子メーカーが「食育」という名目で、自社の宣伝にもつながるような総合学習を行うようになっていったのは自然のことだったでしょう。
企業に任せておけば教員は労力を割かずにすみます。子どもたちもビデオやゲームを使い、試食まで出来る「食育」の授業に大喜びです。(続く…

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