「人と生きる」ことを学ぶ学校(5/7)
今年1月26日にスタートした「夜スペシャル」は、「公立の学校が塾の力を借りて受験対策をする」というものです。
授業は国語と数学が週に3日。放課後、夜6時半から塾講師と一緒に夕食を食べた後に始まり、10時には教室を出られるようにします。希望すれば土曜日の午前中には「オプション英語」も付けられます。
月謝は週3日で1万8000円、週4日で2万4000円と、「授業を担う塾での同じ内容の授業の半額」を売りにしています。
対象は受験を控えた中学2年生で、受講生は20名弱。杉並区立和田中学校(和田中)校長の「学校の授業についていけない生徒にはむしろ負担になる。無理に参加しないで」(『朝日新聞』12月9日)、「意欲や力のある『ふきこぼれ』の生徒に対応する」(『東京新聞』12月11日)などという発言から、成績の良い子ども向けと分かります。
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憲法にも触れる行為
企業が公立学校に入り込んで保護者から直接料金を徴収して利益を上げ、宣伝効果も上げる。望む授業を受けるために保護者が特別料金を支払う。
ーーこうしたことは、憲法にも保障された「教育の無償制」や「教育の機会均等」を揺るがす行為です。
実際に、多くの批判も上がっています。
しかし、校長と杉並区は「『夜スペシャル』は、地域のボランティアが行う『学校の教育活動ではない活動』であり、料金も安く設定されており、企業の利益にはならない」としてすり抜けてしまいました。
本当に学校の教育活動ではないのか
しかし、実際はかなり疑問です。
まず何よりも子どもや保護者にとって「夜スペシャル」が「学校の教育活動外」に見えるでしょうか?
「夜スペシャル」開始前後には、連日のように校長がマスコミに登場しては「和田中の新しい取り組み」として宣伝していました。校長と和田中PTA広報がつくるホームページでは、校長名で「夜スペシャル」への参加生徒も募っています。
さらに校長は、「公立校が特定の塾の講師を招いて、一部の子ども向けに有料の授業をするわけにはいかない。だから、和田中を支援するボランティア組織『地域本部』が主催する」(『朝日新聞』2008年2月3日)とも言っています。
本当に「夜スペシャル」の料金は実費程度?
「実費程度の授業料」について。ある地域住民が、SAPIXの通常授業と「夜スペシャル」の授業の分単位の料金を試算したところ、「夜スペシャル」の授業料はSAPIXの通常の授業料から消費税5%分を引いた金額に過ぎないということが分かりました。
「月謝が半額なのは、施設費などは杉並区が持ち、雑事をボランティア組織である地域本部が引き受けているからです。通常のSAPIX料金と比べて値引きが大きい教材費は、『学校と塾が協同開発』するそうですが、その著作権は塾側にあるという話も聞きました。そうやって著作権を渡すことで教材費の穴埋めしているのでは?」(地域住民)
地域本部(区では学校支援本部と呼ぶ)の予算も、もちろん税金です。
一度は疑義を唱えた東京都教育委員会もこの説明に納得し、「学校の教育活動外であり、生徒の学力向上という公共の利益のためのものであることは明確」と、スタート直前の1月24日に「夜スペシャル」容認しました。
注:文中の民間人校長は2008年3月末日で退任し、2008年4月からは別の民間人校長になっています(続く…)