「教育の原点」を取り戻すために(3/3)
政治と一体化したマスコミによる世論誘導
昨年の秋と同じです。マスコミ各社は自民党圧勝が決まった後になって、まるで用意していたかのように小泉政権が行なった構造改革の問題点、いわゆる格差社会の問題についての報道を一斉に始めました。
選挙前、多くのマスコミはまるで郵政民営化だけが焦点であるかのような報道を続け、構造改革が国民にどのような生活をもたらしているのかということをきちんと伝えようとしませんでした。
政治と一体化したマスコミによる世論誘導。ちょっと横道にそれますが、その怖さは拉致問題についても感じます。
安倍内閣になって担当の首相補佐官が起用され、10月には政府が重点的に報道するようNHKに命令まで出した拉致問題。それは安倍首相が副官房長官を務めた2000年以来、極めて大きく報道されるようになりました。
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1960年代から断続的に起きていながら、ほったらかしにされてきていた拉致事件が、急に脚光を浴びたのです。
拉致問題に熱心に取り組み、北朝鮮脅威論をあおり立てる人たちが、憲法「改正」、軍事増強を唱える人たちと重なることもあいまって、何とも言えない不安を覚えます。
偶然の一致なのか15日には、防衛庁の省昇格関連法や「改正」テロ対策特別措置法も成立しています。
これらの法案を可決させ、自民党政治家から「保守本流に戻った」と喝采を浴びる安倍政権。「戦後体制からの脱却」を掲げる安倍首相。彼が次に照準を定めているのは憲法「改正」です。
改めて子どもの権利条約を広める重要性
取材やNGOの活動のなかで出会う親の愛を渇望する子どもたち。臨床の現場で出会う親(世間)の期待でがんじがらめになったおとなたち。そうした方々の現実を見たとき、私には安倍政権が指し示す先に人々が幸せなる社会を想像することはできません。
自分の親からされたことを振り返ったとき、規律と統制、すなわち「上から押しつけられた価値」を子どもに植え付けることで子どもが“よく育つ”と思えるでしょうか? 一部のエリートのための社会で子どもはすくすくと育つでしょうか? そんな子どもたちの犠牲の上に築かれた日本は、本当に「美しい国」でしょうか?
私たちは早急に「教育の原点」を取り戻さなければなりません。子どもをめぐる現状が厳しさを増す中で、今度こそ現実をともなった「教育の原点」を確立していかねばなりません。そのために役立つのは、やはり「教育の原点」を示した国際条約であり、国内でも強い拘束力を持つ子どもの権利条約です。
改めて子どもの権利条約の持つ理念、そして重要性を改めて広めていきたいと思います。(終わり)