「教育の原点」を取り戻すために(1/3)
2006年12月15日、私たちは「教育の原点」を失いました。「改正」教育基本法が成立したのです。
「教育の原点」は人格の完成を目指す人間教育です。そのために、子どもの成長発達を援助するための締約国の責務を定めた子どもの権利条約は「一人ひとりの子どもが、その持てる能力を最大限に発揮できるよう援助すること」(教育の目的/29条)を定めています。
その子どもの権利条約の理念は、人格の完成を教育の目的とし(1条)、時の権力による介入を排除した(10条)教育基本法にも通じます。多くの命を奪った戦争の反省に立ち、当時の日本人は世界に半世紀も先んじた「教育の原点」を確立していたのです。
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その原点が、論議もつくされぬまま崩壊しました。必ずしも理念通りの教育が行われて来なかったという現実はあるにせよ、「憲法を変えなければ『改正』はできない」とまで言われていた法律があっけないほど簡単に変えられてしまいました。
15日に国会を傍聴していた人たちによると、形式だけの野党の反対討論と与党の賛成討論があり、あっという間に「改正」案が可決したそうです。
タウンミーティング問題と『改正』問題は別?
タウンミーティングでのやらせや過剰な経費の使い方などが次々と発覚。「『改正』ムードを高めるための世論誘導」「自民党案をそのまま『改正』案にスライドさせた」などの批判もありながら、安倍晋三首相や伊吹文明文科相の責任が追求されることもありませんでした。
同じ15日に、衆議院に提出されていた安倍内閣の不信任決議案も伊吹文部科学相の問責決議案も、簡単に退けられました。
1回あたり平均2千万円を超えた高額の経費が使われて開催された教育改革についてのタウンミーティングでは、会場での送迎に4万円、エレベーターからの誘導に2万9千円などが支払われ、官僚の送迎などに使われたハイヤーが水増しされるなど、不適切なコストがかさんでいました。
こうして開かれた全174回のうち、6割にあたる105回で、やらせ発言や発言依頼者への謝礼などが行われていました。
常識的に考えれば、その責任の所在や不正の原因を明らかにし、当時官房長官だった安倍首相がどのように関わっていたのかにもきちんと追求されるべきではないでしょうか。少なくとも安倍首相が給与を返納して事足りるという種類の問題ではありません。
ところが、安倍首相らは「タウンミーティング問題と『改正』問題は別」と言い切り、きちんと取り合おうともせず、今回の可決に踏み切りました。(続く…)