女性皇族の結婚報道と複雑性PTSD(1)

トラウマ

昨今、「複雑性PTSD」という病名がやたらと聞かれるようになりました。とある皇族女性の結婚問題をめぐる報道から、一躍トップワードになりました。

そもそもPTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)とは、命の危機を感じるような圧倒的な出来事に直面したり、それを直接目撃したことなどによる衝撃が発端となります。

「圧倒的な出来事」とは、たとえば戦争や性的被害、災害や事故などです。こうした生命を脅かされるような体験の記憶が自分の意思とは関係なく思い出されたり、悪夢が続いたり、繰り返し体験しているような感じがして、その出来事を想起させるようなことをどうにかして避けようとします。

また、その出来事に関連する記憶が抜け落ちたり、辛さのあまり現実感がなくなったりすることもあります。恐怖や怒り、戦慄、罪悪感などが継続的に感じられ、物事への積極的な興味関心などが薄れてしまいます。

1970年代にベトナム戦争に行った兵士やレイプ被害者への研究が進む中で、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM』に採用されることになりました。


複雑性PTSDが診断名とされるのは来年から

対して、複雑性PTSD(Complex post-traumatic stress disorder:C-PTSD)はまだまだ新しい診断名です。

2018年に発行された世界保健機構(WHO)による『ICD-11』で、初めてPTSDと区別された診断基準として記載されました。これが正式に診断名とされるのは2022年1月1日。つまり来年からです。

その診断基準では、「逃れることが困難もしくは不可能な状況で、長期間・反復的に、著しい脅威や恐怖をもたらす出来事」が要因とされ、たとえば「反復的な小児期の性的虐待・身体的虐待」「拷問」「奴隷」「集団虐殺」などが言われています。

また、PTSDの諸症状に加えて否定的自己認知、感情の制御困難や対人関係上の困難といった症状が顕著とも言われます。

“過酷な子ども時代”を生き延びた人たちと重なる

虐待

まるで「できたてほやほや」「発見されたばかり」のようにも見える複雑性PTSDですが、臨床の現場ではかなり前から、これと重なる症状の人々に出会うことがありました。

“過酷な子ども時代”を生き延びてきた人たちです。

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Posted by 木附千晶