日本の若者は褒められて育っているのか?(3)
それからもう一つ、褒められ、愛された経験は重要な能力を育てます。
最近、保育や教育、さらには人材育成などの分野でも注目されているレジリエンス(resilience)を高めるのです。
レジリエンスとは、「回復力」「弾性(しなやかさ)」を意味する英単語です。
心理学的には、「心の(精神的)回復力」とか「過酷な環境にも対応する力」などと考えられています。
つまり、逆境やトラブル、ストレスフルな状況に置かれても、「心折れずにいられる力」ということになるでしょうか。
そうした心の持ち主をレジリエント(resilient)な人と呼びます。
愛された経験はレジリエンスも高める
このレジリエンスを高めるためにも、愛された経験や認められた経験などが必要であることがさまざまな研究から分かってきました。
ご興味のある方は、『人間の発達とアタッチメント:逆境的環境における出生から成人までの30年にわたるミネソタ長期研究』(誠信書房)を読んでいただけたら、と思います。
また、同書は、「きちんと愛されなかった」経験(安定型のアタッチメント形成ができなかった経験)が、最近話題の複雑性PTSDを初めとするアメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)につながる症状をもたらしたり、ADHDと診断される人々(つまり、本来は発達障害ではない人々)の増加に一役買っている可能性も指摘しています。
エビデンスを踏まえて
こうした研究が示すエビデンスを踏まえながら、「心が折れやすい」とされる日本の若者や、右肩上がりに増える発達障害とされる子どもの状況(小中学生の8.8%に発達障害の可能性 文科省調査)を見てみると、その背景にあるのが、「若者自身の問題」であったり、「発達障害への認知の広がり」だけなのか。疑問を感じずにはいられません。
振り出しに戻って、もう一度、問うてみたいと思います。
「日本の若者が本当に褒められて育っているのか?」
私の回答は、「否」です。