いじめと不登校ーー子どもを追い詰めるものは?(2)

しかし、「いじめそのものが不登校の原因」かと問われると、少し疑問もあります。

確かにいじめは、不登校のきっかけとなる原因のひとつです。でも、周囲のおとなが、その子どもの辛さをきちんと受け止め、共に悩み・考え、真摯に向き合いながら助けようと努力したなら・・・。子どもの気持ちはだいぶ変わってくる可能性があるのではないでしょうか。

旭川女子中学生いじめ凍死事件

忘れられないいじめ事件があります。21年におきた旭川女子中学生いじめ凍死事件です。

女子中学生は、上級生の男子生徒から裸の画像を送るよう強制され、それを拡散されたりしていました。いじめはエスカレートし、深夜に呼び出されたり、目の前での自慰行為を強要されるなどしていたと言います。

女子中学生は、いじめを受けていた2019年6月学校に電話して「死にたい」と訴えて、自ら川に入ったりもしていました。学校は上級生らから聞き取りをする一方、女子生徒本人には事情を聞かないまま、「いじめではない」と判断しました。女子生徒の母親は、学校にたびたび相談したのに、じめを否定され続けたそうです(『読売新聞オンライン』22年4月16日)。

いじめの認定は訴えから3年後

その後、転校するも女子中学生は不登校となり、SNSで「いじめを受けてから1年たちそうなのに私は何もできません。何もかもが恐くてたまらない」などと発信していました。

警察が動く事態にもなっていましたが、学校や教育委員会の動きは鈍く、いじめが認定されたのは訴えから3年たってからでした。

何が不登校、自殺へと追い込んだか

はたして、彼女を不登校、そして自殺へと追い込んだのはいじめっこたちだったのか。私にはそうは思えません。そうではなく「こんな地獄に自分を置き去りにしたまま平然としているおとなたち」だったのではないでしょうか。

「自分がこんなに辛いのに、その状況を放置しておく世界」ーーそれが「怖くてたまらなかった」のではないか? と思ってしまうのです。

本当の責任はおとなと社会にある

また、女子中学生のSNSなどからは、「自分が悪い」「自分でどうにかしなくては」といった思いも読み取れました。

なぜこんなことまでされながらも、自分を責め、おとなたちへの怒りさえも出そうとしなかったのか。彼女のそれまでの人生も気になりました。

もちろん、いじめはあってはならないことです。不登校のきっかけになることも十分に考えられます。しかし、子どもを本当に追い込んでいるのは、「事なかれ主義」で保身に走る、私たちおとなと社会そのものなのではないでしょうか。

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Posted by 木附千晶