カーリングペアレント(3/5)
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そしてこの12条は、心理学的に考えれば「子ども自らが安定した愛着関係を築くことを可能にする」という点で、画期的な権利です。
子どもは、自分の欲求に応えながら世話をしてくれる親との間に、愛着関係を築いていきます。この関係性は子どもに安心感をもたらし、自己肯定感と呼ばれるものと同時に、「困ったときには世の中は自分を助けてくれる」という基本的信頼感も育てていきます。
こうした安全感をもたらしてくれる関係性は、安全基地として子どもの心のなかに取り込まれていき、やがては目の前に親がいなくても、不安やおそれを感じずにやっていけるようになります。多少のトラブルがあっても、心のなかにある安全基地でエネルギーを充填し、困難に立ち向かって行くことができるようになっていきます。
子どもの欲求を受け止め、応えるという関係性は、子どもの権利条約が前文でうたい「調和の取れた人格の形成」に不可欠なものなのです。
「応答的な関わり」の重要性
こうした「応答的な関わり」が、母親に無関心で、愛情や世話を求めようとしない「回避型」と呼ばれる不安定な愛着スタイルを築きやすい「育てにくい子ども」の場合であっても安定的な愛着形成をもたらすという研究結果もあります。
精神科医の岡田尊司さんは、著書『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』(朝日新聞出版)のなかで、オランダで行われた気むずかしい気質を示す乳児を百人ピックアップし、そのうち無作為に選んだ半分は通常の指導だけ行い、もう半分には生後6カ月から3ヶ月間、母親に赤ちゃんに対してできるだけ反応を増やし、身振りや表情豊かに反応するよう特別な指導を行った研究を紹介し、次のように書いています。
「通常の指導だけを行ったケースでは、その後、多くの子どもが回避型の愛着を示したのに対して、特別な指導を行ったケースでは、大部分が安定型の愛着を示した」(115ページ)
「些細な違い」が決定的に
そして、なぜそんなことが可能なのかをこう説明しています。
「愛着の形成において、スキンシップや抱っこと並んで、重要なのが、応答的な反応ということだからだ」。応答的な反応とは、子どもが泣けば、すかさず注意を向け、何か異変が起きてはいないか、何を欲しがっているのかと、対応することであるし、子どもが笑えば笑い返し、気持ちや関心を共有しようとすることである。
逆に応答的でない反応とは、求めているのに無視するかと思えば、求めてもいないのに、親の都合を押し付けることである。ミルク一つ与えるのでも、時間が来たのでそろそろ与えなければという与え方は、この応答性を無視したやり方である。赤ん坊が、おなかが空いたと泣いたときに与えるという与え方が、子どもの主体性を尊重した、応答的な方法だと言える」(115~116ページ)
おとなからすれば、「些細な違い」にしか見えないものが「決定的な違い」になってしまうのです。(続く…)