水族館のマグロが死んだ(2/5)
その生物に適した環境、生きるのに必要とするものから離れた下での適応を迫られると、異常行動を起こすことはよく知られています。
動物園や水族館の生き物だけでなく、ペットにも同様のことが起きます。自ら毛をむしってしまったり、尾をかんだり、自己破壊に走ったり、攻撃的になって飼い主に危害を加えるなどの話は珍しくありません。
ストレスは虐待を連鎖させる
他の生物に比べて著しく大脳が発達し、理性的であるはずの人間も同じです。
たとえば、虐待の世代間連鎖について。子ども時代に虐待された者が親になると子どもを虐待してしまうという話はよく聞きます。しかし、だれもが「親と同じ道」をたどるとは限りません。
アメリカとイギリスで編集された60以上もの研究報告書をもとに、虐待の世代間連鎖の発生率を予測したオリバーの報告では、子ども時代に虐待を受けた者が親になった場合、精神的ストレスが高まると虐待者になりうる者が三分の一いると見積もっています(『いやされない傷ーー児童虐待と傷ついていく脳』 友田明美/株式会社 診断と治療社:初版7ページ)。
こうした事実を見ていくと、その個体が生きる環境がストレスや恐怖に充ちたものになったとき、個体は破壊的な行動・・・たとえば虐待や自殺のような・・・に走らざるを得なくなると考えるほうが自然に思えます。
やるせない事件
マグロの話の次に書くと怒られそうですが、最近同じようにやるせなさを感じた事件がいくつかありました。
ひとつは、東京・杉並区久我山で8月7日夜に行われていた夏祭りでにぎわう商店街で、瓶にカセットボンベが取り付けられた火炎瓶のようなものが投げ込まれ、15人が負傷した事件です。
犯人と見られる男性は、商店街に面した自宅建物から火炎瓶を投げ込み、直後に首を吊って自殺しました。
報道によると、男性は一人暮らしで、「祭りがうるさい」などと近所にもらしていたとのことです。(続く…)