平和の国はどこにある?(8/8)

2019年5月29日

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前回までに述べたような研究、実証、いえ、現実があるからこそ、科学的・歴史的・世界的に認められた子どものための国際条約である子どもの権利条約は、「子どもは、愛情と理解ある家庭環境の中で子どもが成長すべき」として、「子どもの成長および福祉のため、責任を十分に引き受けられるような保護と援助を家族に与えよ」と述べているのです(子どもの権利条約 前文)。

だからこそ国連子どもの権利委員会は、子どもの権利条約12条を「子どもがありのままの意見・欲求を身近なおとなに表明し、それに適切に応答してもらう権利」と解釈したのです(2005年11月「乳幼児期(出生から8歳まで)における子どもの権利」に関する一般見解)。

平和の国は確かにある

戦争も争いも暴力も無い平和の国は、確かにあります。

私たちおとなの目の前にいる、子どもひとりひとりの心の中に、その国は紛れもなく存在しています。

しかし残念なことに、その平和の国を、平和の国として維持し、発展させるようなかかわりが、私たちおとなにできていないのです。競争や格差、差別を容認し、子どもの思いや願いよりも経済的な利益を優先する私たちの社会が、子どもたちの心の中にある平和の国を破壊してしまっているのです。

平和の文化が花開くとき

平和の国は、強い武器や兵力をもつことで到達できるようなものではありません。一部の力ある者の支配によって実現できるようなものでもありません。規範やルールの強化で可能になるものでもありません。

私たちおとなが、子どもの欲求にきちんと応え、ありのままで子どもを抱えてあげることができるようになったとき。
こどもたちが「自分は愛されている」「自分はここにいていいんだ」と、心の底から核心できるようになったとき。
親からされた理不尽な暴力を「ありがたいもの」と受け止めたり、いつのまにか育てた恨みや憎しみをため込む必要がなくなったとき。

そんなふうに子どもたちが生きられるようになったとき、平和の文化は花開き、子どもたちの心の中にある平和の国が、現実の国となるのです。

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Posted by 木附千晶