平和の国はどこにある?(6/8)
こうした「内なる暴力」に抗うには、どうしたらいいのでしょうか。「平和の国はどこにある?」(2)でも示したとおり、規範や価値観を教え込んで超自我を強めても、効果がないことは、過去の歴史が証明しています。
いや、現在進行形の各国の紛争・戦争をはじめ、ヘイトスピーチや、原発の再稼動や武器輸出の問題。パワハラ、体罰、いじめ、虐待・・・現代社会に噴出する、命や尊厳を脅かすさまざまな問題が、それを証明しています。
なんだか絶望的な気分になってきますが、打つ手はあります。
「内なる暴力」が私たちの心の中から生まれてくるのであれば、それが生まれないようにすればよいのです。不幸な子ども時代が、「内なる暴力」を生み、増幅させるのですから、多くの子どもが幸せな子ども時代を送れるような社会を築けばよいのです。
白バラ抵抗運動
ヒトラーが君臨した時代のドイツ国民は、ヒトラーを盲信しました。ヒトラーが言うとおりに戦争へと突き進み、ユダヤ人を収容所に送り、幼い子どもまでも平気で殺しました。
心の底から、ユダヤ人を軽蔑し、「どんな仕打ちをしてもよい」と思っていた人もいるでしょうし、自らの身を守るためにそうせざるを得ない人もいたでしょう。
しかし、そうした世の中にあっても、ユダヤ人の強制収容に反対した人たちがいました。よく知られているのが「白ばら抵抗運動」と呼ばれる反政府運動がありました。
この白ばら運動に参加し、処刑されたゾフィー・ショルという女性を主人公にした映画(『白バラの祈り ゾフィー・ショル最期の日々』TCエンタテインメント)のおかげで、日本でもよく知られていますね。
ゾフィーは1943年にドイツのミュンヘン大学構内で違法なビラをまいた容疑で兄と共に逮捕され、わずか四日後に死刑判決を受け、即日処刑されました。この白ばら運動ではショル兄妹を含む6人が処刑されていますが、最も年若で女性だったためにゾフィーがその象徴のように扱われるのかもしれません。
アリス・ミラー氏の指摘
私が敬愛する心理臨床家のひとりであるアリス・ミラー氏(ポーランド生まれ、スイス在住)は『子ども時代の扉を開く 七つの物語』(新曜社)に興味深いことを著しています。
「ナチ時代に、ユダヤ人を救おうと自分の命を危険にさらした人たち」について、400人以上の証言に基づく実証的な研究から、「多くの人々が残酷な行為へと流されていくなかで踏みとどまることができた人々の家庭の雰囲気」、「教育スタイル」について述べているのです。(続く…)