遺族を訴訟に追い込んだ大川小学校事故検証委員会(3/7)
検証の方法も、とうてい理解できるものではありませんでした。
わかりやすい例を挙げましょう。たとえば、検証内容の振り分け方です。
検証委員会には六名の委員のほか、四人の調査委員がいます。その中には、弁護士や学者などさまざまな専門家が入っているのですが、当日の津波について検証したのは、津波工学の権威とされる委員ではなく、心理学者である調査委員でした。
それだけでもびっくりですが、さらに続きがあります。
この調査委員は、7月に出された中間とりまとめ(検証の中間報告)のとき、「学校への津波到達時刻は3時32分」と、それまでの通説だった「3時37分よりも早い」との見解を示し、みんなを驚かせました。
そして、遺族やマスコミ関係者らから、科学的根拠を示すよう求められ、疑問を投げかけられると、あっさりと新見解を引っ込めたのです。
無駄な時間を費やした検証
ちなみに、検証委員会の最終報告では、津波到達時刻は「37分頃」と明記されています。
他方で、津波工学の専門家である委員がPTSDについて熱弁をふるい、子どもへの聞き取りに難色を示したこともありました。
どうして心理学の専門家が津波について調査をし、津波工学の専門家が心の傷について語るのか・・・。まったく理解できません。
あげくの果てに、まるで思いつきのような検証結果を示し、その真偽を確かめることに時間を費やすなど、絶対にやってはいけないことです。
生き証人の検証を軽んじた
そもそも遺族は、当初から「津波の検証は不要」と言っていました。
なぜなら遺族が知りたいのは、「裏山や運転手の乗ったバスなど、十分に逃げられるだけの客観的条件がそろっていて、教師が一緒にいながら、なぜ子どもを救えなかったのか」というただ一点だけだからです。
それにもかかわらず、検証委は、その問題の核心からほど遠いことばかり、熱心に検証を続けました。
津波の挙動や天候など、核心ではない、事件の周辺の検証に力を入れ、最も肝心な生き証人の検証を軽んじたのです。(続く…)