搾取される子どもたち(4/10)
だから、「ブラックバイトと思っていない学生が少なくない。まず、認識をさせないと、相談に乗れないし、抗議もできない」と大内裕和中京大学教授(『東京新聞』2013年9月5日)が指摘するような問題も起こります。
『搾取される子どもたち(2)』でご紹介した「バイト中の事故で店長がポケットマネーから3000円をくれた」と話してくれた学生も、「自分がかってに事故に遭ったのに、3000円くれた店長はいい人だと思う」と語り、私をビックリさせました。
本来であれば、バイト中の事故の保障がまったくされないことはもちろん、店長がポケットマネーから口止め料とも言える見舞金を払うことも大問題のはずです。
それでも本人が「おかしい」と思わなければ、問題視されることはありません。
まるで階級社会
まるで昔の身分制度による階級社会のようです。
かつて世界中に、王侯貴族などの身分の高い者たちが自分たちの都合や気分で、自分よりも身分の低い者の身体生命を脅かし、傷つけ、侮辱した時代がありましたが、身分の低い者は「しょうがないこと」と甘んじて受け入れていました。
このように書くと「オーバーだ」と思う人もいるかもしれません。「なんだかんだ言っても、日本の若者たちは自分で仕事を選んでいる」「本当に嫌だったら辞めるという選択肢だって残されている」と、おっしゃる方もいるかもしれません。
「労働の搾取」
確かに、日本の若者たちの働き方は、人身売買でどこかから子どもを連れて来て働かせる強制労働や、昭和の時代に一大ブームを巻き起こし、最近も映画化された『おしん』に描かれた世界とは違うかもしれません。
しかし、理不尽な働き方も受け入れざるを得ない環境に置かれ、自らをすり減らしてまで、その身や能力を力在るものに捧げて生きていく道を強いられていることは共通しています。
強制労働を強いられる子どものように「逃げたら殺されるかもしれない」環境におかれてはいなくても、日本の若者たちは「逃げたら生き延びるのは難しい」環境におかれています。
これを「労働の搾取」と呼ばずしてなんと呼んだらいいのでしょうか。(続く…)