暴力の裏に隠された意味(2/5)
本来、政治家の仕事は、“人の傷み”をくみ取り、それを政治の中に生かすことであるはずです。
それにもかかわらず、働けない人、健康でない人、「たらたら飲んで、食べて、何もしない」(麻生首相)でしか生きられない人の苦しみを理解しようとせず、なぜ彼らがそうした中で暮らしているのかを検証しようともしないまま、「健康維持も個人の努力」とばかりに「自分は努力をし、たくさん税金も払っている。それを努力しない人間のために使いたくない」などと言うなんて、政治家としての資質を問われるべき発言です。
戦前に大量の朝鮮人労働者を強制連行し、ただ同然で働かせて利益を上げた麻生炭鉱を土台に発展し、九州屈指の企業グループの御曹司として生まれ育った首相(マスコミが書かない麻生財閥の深い闇)。その「特殊な生い立ちが成せる技なのか」などと、うがった見方もしたくなってしまいます。
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もう一人の気になる政治家
同様に、発言からその生い立ちが気になる政治家がもう一人います。大阪府の橋下知事です。
タレント弁護士として有名だった橋下知事は「子どもが笑う大阪」を掲げて府知事に当選。最近は、もっぱら教育問題に取り組んでいます。
たとえば約340億円の教育費を削りました(前年度比)。おかげで障がいのある子などへの「支援教育の充実」は約5億円、不登校など「課題を持つ子どもへの支援」は約2億円減、私学助成金は小中学校25%、高校10%削減です。
脅迫してテスト結果を開示
そうやって子どもが育つための土壌を壊す一方で、なぜか全国学力テストの点数を上げるための対策には熱心です。
この秋に公表された全国学力テスト(「学力テスト不正問題」参照)の結果が、二年連続で全国平均を大きく下回り、低迷していたことの理由を「自治体ごとの点数が公表されていないから頑張ろうとしない」と断じ、教育委員会に迫ったことは有名です。
ラジオなどで「クソ教育委員会」などの汚い言葉で教育委員会を批判したことは記憶にも新しいでしょう。
教育委員会を「クソ」呼ばわりしたことについては、早々に「オカン(母親)に怒られた」と反省したものの、その後も「公表しないなら府教委は解散」「府は義務教育から引く」(『朝日新聞』九月七日)など、本来知事権限にはない、できもしないことを並べては府教委を恫喝。市町村教委に対しては「公表するかしないかで予算に差を付ける」などと脅しました。
その結果、大阪府のほとんどの自治体がテスト結果を開示しました。
うそぶく知事
こうした経緯を棚に上げて開示にあたっての記者会見で知事は、こんなふうにうそぶいたのです。
「僕が何か強要したとかいうことではなくて、市町村教委の自主的な判断で公表していただいた。僕は市町村教委に対して具体的な直接的な人事権も予算権も持っていません。政治家として出来る範囲のことを精一杯やっただけ」
(詳しくは大阪府のホームページ「2008年10月16日知事定例会見」参照)
また、同じ記者会見の場で、上記のようなやり方について「教育現場の信頼を損ねたのではないか。もう少し違うやり方があったのではないか」という記者の質問に対しては、
「まったくないですね。(略)自分自身としてはほかの方法というものは思いつきません」とも答えました。(続く…)