「人と生きる」ことを学ぶ学校(6/7)

2019年5月29日

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「東京での公立校との連携を地方進出の足がかりにしたい」(SAPIX中学部・高等部の高橋光代表・『AERA』2008年1月28日号)
塾にとって、設備投資が抑えられる公立校との提携は願ってもいない話です。

しかも、今回の和田中のように、話題性のある学校と組めばほうっておいてもマスコミが取り上げてくれます。連日の報道を見て、「初めてSAPIXの名を知った」人も少なくないはずです。

夜間塾は「公平」な教育機会の提供?

和田中の前校長は「教師の負担が多きすぎるから外部の力を呼び込む」と、新聞等で発言しています。
また、公立校が塾と提携することへの批判に対しては、和田中PTA広報と一緒につくっているホームページ上で以下のように述べています。

「子どもに100万円単位のお金をかけられない家庭では上位の高校にチャレンジすらできなかったが、和田中では月に一万円出せば上位校を受験するチカラがつく。これこそ、完全ではないが『公平』な教育機会の提供だ」

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前校長の考えを支持する行政とメディア

驚いたことに、文部科学省もメディアも、こうした前校長を支持しています。

昨年度の和田中学校運営協議会には、文科省初等中等教育局の人間が入っているし、今年度、文科省は50億円をかけて前校長が広める「学校支援地域本部事業」を全国に展開します。
『朝日新聞』は「公教育の建前を並べるだけでは学力をめぐる保護者の焦りは消えない。お金のかかる私立学校や塾が現にあるのだから、ここは塾に行けない子への福音と考えたい」(「天声人語」2008年1月9日)とまで書いています。

前校長の考えを支持する人々は、その発言の裏にある「競争教育によって生じた格差は正当である」という考えをも追認していることを忘れてはなりません。さらには「競争に勝つのは、いつも強者なのだ」ということを覆い隠そうとしていることも、きちんと認識しておく必要があります。

公教育が破壊される

「教師が多忙」なのは本当ですが、その原因がどこにあるのかは、きちんと考えておかなければなりません。教師が人事考課と数値目標で徹底的に管理され、子どもと向き合うことをできなくさせられてきた現実を変えていくべきです。
「学力低下」のいちばんの原因は、手足を縛られた教師が、目の前にいる子どもひとりひとりの状況に合わせた授業ができなくなってしまったことなのですから。

さらには授業態度などを点数化した内申点を重視する受験体制や、大多数には最小限度の学びだけしか保障しないという偽りの「ゆとり教育」、個人を分断して差別・劣等感を植え付けるための習熟度別授業なども見直すべきです。

事実をオブラートに包み、「少数の『役に立つ』エリートに手厚く、大多数にはそれなりに」という教育システムを着々とつくりあげてきた結果が、昨今の学力低下を招いたことは今や明白です。

この根本的な部分にふたをして「教師は忙しいから、塾の手を借りる」というのは、公教育の破壊に他なりません。(続く…

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