夢のない国(3)

もちろん、多くのおとなは「子どもらしさを削ごう」とか「従う国民に育てよう」と思っているわけではないでしょう。

しかし、未だに「集団行動」や「集団保育」が当たり前の日本では、号令によって一斉に動ける子どもが「良し」とされ、できない子どもは「気がかりな子」として、場合によっては発達検査を受けるよう、勧められます。

社会が望む行動が取れなかったり、社会が是とする価値観に合わせられなければ、子どもが落伍者になる恐れが高まります。

世話焼きに必死になるな

一方、世界中を見渡してもみても、競争はエスカレートするばかり。「子どもを負け犬にはさせたくない」という“親心”から、いつでも子どもの先回りをして、手を出し、口を出したくなります。

子どもが失敗しないよう、困ることがないよう、落ちこぼれてしまわないよう、世話を焼きたくなります。

何しろ、おとなは「金とスキルが無ければ、何もできない」ことを、おとなは骨身に染みて知っています。
だからこそ、「現実を見て、小さいうちから頑張れ!」と言いたくなります。

子どもの人生をコントロールし、子どもから夢を奪うことになってしまうなどとは思わずに。

行き過ぎたおとなのコントロール

統計的な証明は難しいですが、過干渉過ぎる関わり、行き過ぎたおとな(親)のコントロールについては、あちこちで目にします。

たとえば「オヤカク」です。

企業が学生に内定を出す際、保護者の事前確認しておくことを意味します。就職情報サイトの調査では、就活生の保護者の半数以上が、企業から「オヤカク」を受けたと回答したとか(『NHK NEWSWEB』2024年2月26日)。

親からの就職に関する否定的な意見によって約3割の学生が、結果として「内々定を辞退した」との回答もあります(『マイナビキャリアサポート』)。

親の代理婚活は今や珍しくない

一時、世間を驚かせた「親同士の代理婚活・見合い」も、今や普通です。これらのキーワードを入力すると、驚くほど多くのサイト・業者がヒットします。「親と子の結婚相談会」なるものもあったりします。

昨今の大学では、親の授業参観も当たり前ですし、大学のオープンキャンパスや説明会は、当事者より親の方が多いくらいです。子ども1人に対し親はふたり・・・両親そろって来れば、親の数が倍になります。

ある大学の先生は、「大学説明会でも、熱心に話を聴いてうなずいているのは親だけ。子どもは他人事、という感じです」と嘆いていました。

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Posted by 木附千晶