依存症という病(2)

2019年12月19日

孤独

 依存症は、病気としての社会的認知が低かったため、大分県別府市や中津市などが、パチンコや競輪での浪費を続けたことなどを理由に生活保護を停止・減額してきたことなどがあり、社会問題になったこともあります。

 長い間、本人の意志の弱さは倫理感の問題と誤解されてきたのです。でも、依存症は、空虚感に端を発する、れっきとした病です。その根っこには、寂しさや不安などがあり、それを手っ取り早く埋めてくれる“何か”で紛らわそうとすることから、始まります。

 多くの人がたくさんの喪失体験をした東日本大震災後、被災地ではパチンコ依存が増加したという、いくつかの興味深い指摘があります。
東日本大震災48被災地でパチンコ店満席・否認の病気
被災地のアルコール問題・嗜癖行動に関する研究


実際には孤独な人も多い?

 お金や名声に恵まれ、たくさんの人に囲まれて華やな生活を送っているかにみえる著名人・芸能人も、信頼できる人がいなかったり、弱音を吐ける場所がなかったりと、実際には孤独な人が多いのではないでしょうか。

 田代まさしさん逮捕後、『東京新聞』(2019年11月8日)に筑波大の原田隆之教授が寄せていた次のようなコメントもありました。

「(薬物依存症の怖さを訴える)講演やテレビ出演を受ける中で『もうがっかりさせられない』『絶対に失敗できない』と大きなストレスやプレッシャーを感じ、無理がたたった可能性もある」

不安や寂しさから解放してくれる

 そもそも芸能人という「みんなから注目され、賞賛される人にならん」と頑張れる裏側には、「だれからも振り返ってもらえない自分は受け入れられない」という、自尊感情の低さがあるのかもしれません。

 せっかく成功したとしても、その地位を維持することもなかなか大変です。芸能人のような人気商売では、一躍時の人となっても、忘れ去られてしまうことも珍しくありません。
 たとえ今は、そうでなくても「いつ、落ちぶれるかわからない」という恐怖といつも隣り合わせです。

 麻薬や覚醒剤は、たとえ一時にせよ、こうした不安や恐怖、寂しさから解放してくれます。

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Posted by 木附千晶