なぜ「子どもと家族」に注目するのか(1)
私たちはだれもが、ある家族のなかに生まれ、育ち、今に至っています。私たちを育てた親(もしくは親代わりのおとな)も、また同じようにある家族に生まれ、生きて来ました。
私たちの性格の“もと”になる気質は、親やまたその親から受け取ったものであると同時に、その気質を周囲のおとながどのように受け止めたかによって、子どもの性格は変わってきます。
たとえば、「新しい物に目が行きやすい」タイプの子どもに対して、周囲が「考えが足りない子」という対応をすれば、その子は自分を「思慮の浅いダメな人間だ」と思いながら成長するでしょう。
一方、「好奇心旺盛な子どもだ」という思いで周囲が接すれば、その子は「自分はいろんなことに挑戦できる」と思って成長するかもしれません。
一生涯の人間関係は幼少期に決まる
このように、その人の性格や生き方というのは、「それまでの人間関係のあり方」であり、「人と付き合うときの癖」のようなものです。その多くは、子ども時代にその人を取り巻く家族などの身近な人間関係によってできあがります。
精神科医で米国マサチューセッツ州ブルックラインのトラウマセンター創立者であるBessel van der Kolkは、著書『身体はトラウマを記録する』(紀伊國屋書店)で(202ページ)、次のように述べています。
「幼少期の愛着パターンによって、私たちが一生にわたって人間関係を図示することになる、心の中の地図が作り出される。その地図は、私たちが他者に何を期待するかだけでなく、彼らがいてくれるとどれだけの慰めや喜びを経験できるかにもかかわっている」