現実から解離した教育再生会議(6/8)
人格形成についても同様です。
第二次報告は、徳育や自然体験、職業体験を行うことで「命の尊さや自己・他者の理解、自己肯定感、働くことの意義、さらには社会の中で自分の役割を実感できるようになる」としていますが、本当にそうでしょうか?
確かに、自然体験や職業体験は、机にかじりついているよりも視野を広げ、見識を深めてくれることでしょう。「良いこと」と「悪いことを」を教えれば、善悪の区別はつくようになるでしょう。
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しかし、それだけで自己肯定感や自己・他者の理解、命の尊さなどが芽生えるのか。はたして「良いこと」を教えれば良い行いする子どもに育つのかは、はなはだ疑問と言わざるをえません。
自己肯定感や他者への共感が、「自分を受け入れてもらえた」経験の上に成り立っていることは、今や疑念の余地がないからです。
また、親に対しては「親の学びと子育てを応援する」として、「子どもの成長とともに学び、育児を通じて子どもがいる喜びを感じる」ようになれと言っています。
そして、親への提言の筆頭に「早寝早起き朝ご飯」などの生活習慣、挨拶やしつけを子どもに身につけさせることを挙げています。
もちろん、こうした生活習慣はとても大切です。挨拶も礼儀作法も身につけているにこしたことはありません。その内容自体はまったく間違ってはいないのです。
子育て不安を抱える親の増加
でも世の中には、たとえば深夜遅くまで働いていたり、片親家庭であったりして「もっと子どもに手をかけてあげたい」と思っていても、できない事情をかかえた親がいます。
一方で、食事の用意もしつけもほぼ完璧、教育熱心で子育てにも意欲的に見えながら、子どもの要求・欲求をきちんと受け止められない親がいます。一見、「子どものため」を考えているようでいながら、“愛情”で子どもを縛り、ダメにしてしまう親もいます。
だいたい今の親たちの多くは頑張りすぎるくらい頑張って子育てしています。自己決定と自己責任の重圧が増すなか、「人様に迷惑をかけない、きちんとした子どもに育てなければ」と賢明になっています。
そうした不安感が、どっしり構えて、子どもの育ちに合わせて見守ることを困難にしています。
以前、ある育児雑誌で「子どもに関する心配は何か」というアンケートを取ったことがありました。そのとき、男の子を持つ母親の心配事のトップは「子どもが犯罪者にならないか」でした。
また、ベネッセの教育開発研究センターによる子育て意識調査(『第3回 幼児の生活アンケート報告書 国内調査 乳幼児をもつ保護者を対象に』)では、「子どもが将来うまく育っていくかどうか心配になる」という否定的な感情がここ5年間で6.4ポイントも増えています。(続く…)